本研究は、日本の伝統的住宅の居住様式と宗教がどのように関わっているのかを、神道は宮崎県西米良村および西都市妻地区、仏教・神道として福岡市博多町家および福岡西新町家、仏教・キリスト教カトリック・隠れキリシタンとして長崎県外海町、先祖崇拝として奄美大島笠利町および大和村、先祖崇拝・御嶽(うたき)信仰として沖縄県大宜味村および竹富島の住宅と居住様式調査によって以下の諸点を明らかにした。 (1)住宅の規模や屋敷構成および間取り型は地域によって異なるが、近年中廊下+座敷型のように一定の型が共通して表れている。 (2)神棚(神道)、仏壇(仏教)、祭壇(カトリック)、先祖棚または仏壇(先祖崇拝)と信仰および祭る対象は異なるが、それらの備えられている位置や空間は同じである。 (3)人生行事および年間行事は、床の間および神棚または仏壇、祭壇、先祖棚のあるザシキで行なわれ、これら宗教的対象物が重要な役割と意味を有している。また、これら人生行事や年間行事の自宅での行動様式(居住様式)は共通している。 (4)大部分の間取り型に共通する空間としてナカノマがあり、神棚や聖画が祭られ、沖縄の二番座には仏壇が備えられているが、これらは内部および来訪者に表示する空間と宗教的表示物であり、日常生活におけるイエを社会的に表示する意味を示し、また、家族の日常的祈念の場と対象ともなっている。 (4)これら住空間と居住様式は宗教と関わっているが、特定の宗教に関係ない共通するものであり、わが国の文化といえるものである。
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