研究概要 |
Coはバルク状態において,420℃の同素変態点を境に,高温相である面心立方(fcc)構造から低温相の六方稠密(hcp)構造に変態し,室温に於いてはhcp構造が安定となる。しかし,そのサイズが減少し,ミクロンオーダーの微粒子になると,fcc構造となることが数多くの研究から知られている。このCo微粒子の特異な結晶構造の発生機構についてはこれまで理論的考察は殆どなされておらず,またhcp-Co微粒子の合成に成功した例もない。一方,hcp-Coは高い一軸性の結晶磁気異方性を有するため,もし微粒子状態で安定に合成することが出来れば,超高密度記録材料への展開や巨視的量子効果の研究など,基礎及び応用の面で理想的な材料の一つとなる可能性がある。本研究では,我々が新たに開発した超微粒子スパッタ技術を用い,hcp-Co超微粒子を安定に合成すること,そしてその発生機構の解明を目的とした。研究の成果を簡潔にまとめると次のようになる。Co粒子のサイズ及び結晶構造は,スパッタ条件(特にスパッタガス圧力,放電電力)に強く依存し,粒子サイズの増加と共にhcp/fccの体積分率は著しく増加して,40nmのサイズでほぼ完全なhcp-Co微粒子となることがわかった。これらのhcp-Co粒子は,Wulff多面体の外形形状を有する単結晶粒子であることが確認された。表面,双晶境界,積層欠陥,弾性エネルギー全てを考慮した厳密な自由エネルギー計算を行い,微小サイズ(<10nm)における高温相fcc,そしてサイズ増加に伴うhcp相の出現は,微粒子特有の本質的表面効果に起因していることが明らかになった。この理論計算によれば,結晶相のサイズ依存性,そしてアニールに伴う結晶相安定性に関する実験結果を全て定量的に説明できる。本研究で得られたhcp-Co微粒子は20nm程度の3次元ランダム微粒子状態で1500Oeもの高い保磁力を示し,超高密度記録材料への応用および微粒子系における磁化反転機構の研究に極めて有用な材料と考えられる。
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