研究概要 |
【目的】アルカリ金属ホウ酸塩ガラスはホウ酸異常と呼ばれる特異な挙動を示す。音速は構造変化に敏感な物理量であるので、音速を測定することによりこのガラスの物性を一層明確にする。また、音速の挙動と微視的構造との関連性を解明する目的で、ラマン・赤外分光法によりこのガラスの微視的構造を明らかにする。 【実験】アルカリ金属ホウ酸塩ガラスの化学組成をxM_2O・(1-x)B_2O_3(M=Li,Na,K,Rb,Cs)で表す。個々の二成分系で組成xを0.02刻みで変えたバルクガラスを作製し、縦波音速と横波音速を周波数10MHz,298Kで測定した。また、ガラス転移温度と密度も測定した。ラマン散乱の実験は90°散乱ならびに180°散乱配置で行なった。アルゴンレーザーの5145Å,100mWの光をf=200mmのレンズを通して試料に照射し、散乱光はF2.5のレンズで集光した。分光は加分散型トリプルモノクロメーターを用いて分解能2cm^<-1>で行ない、散乱光はフォトンカウンティング方式で検出した。赤外分光は正反射法で測定し、測定された反射スペクトルに対してKramers-Kroning(K-K)変換による処理を行なって赤外吸収スペクトルを得た。 【結果と考察】音速が複数の極値(極大・極小・極大)を示す新しい現象を発見した。ラマンスペクトルの内部振動モードからボレート群の種類を判別した。また、ラマンスペクトルの低振動数領域に現われるボソンピークからボレート群の中距離相関距離を決定した。更に赤外吸収スペクトルからアルカリ金属ホウ酸塩ガラスを構成している構造単位の同定と定量を行なった。音速異常の発現機構をラマン分光と赤外分光の双方から解明した結果、音速の異常はボレート群の生成と消滅に起因していることが判明した。
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