研究概要 |
従来、CVD法によるダイヤモンド合成では、原料としてsp^3混成軌道をしているメチル基を持った直鎖構造のCH_4,CH_3OH,CH_3COCH_3などが主として用いられてきた。 最近、われわれは、環状化合物であるシクロヘキサンとベンゼンからダイヤモンド粒子と薄膜の合成に成功した。前者は、sp^3混成軌道をしている炭素を6個もち、後者は、sp^2混成軌道をしている炭素を6個持っている。環状化合物でsp^2混成軌道をしている炭素を含む分子からダイヤモンドが出来たのである。 さらに、ベンゼンの誘導体であるアニリンからもダイヤモンドの合成に成功し、ベンゼンとアニリンの混合溶液の比率を変えて、ダイヤモンド薄膜を作り、X線回折図形から格子定数を算出したところ、アニリンの量に比例して格子定数が減少した。これは、ダイヤモンドに窒素がドープされていることを示唆している。ホール効果を測定すれば、半導体がn型かどうか、キャリアー濃度ともわかるのだが、装置がないため実験できないでいる。 科学研究補助金で購入したガスクロで、反応管から出てきたガスを徹底的に分析し、CH_4,NH_3を検出している。これより、ベンゼン環が切断されていることが予想される。したがって、反応は、 benzen+aniline→CH,NH_2→n-type diamond のように起こっていると予想される。これが、本研究の最大の成果である。 これらを確かなものにするため、更なるガス分析、ホール効果の測定など行う必要がある。
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