研究概要 |
実用水素吸蔵合金の水素貯蔵能力は1-3%の範囲にあり、さらに高水素吸蔵能のより安価な合金開発が現在の研究開発の最大課題と位置づけられている。一方、3.4%以上の高い水素吸蔵能力を持つマグネシウム系合金は,資源的にも環境適合性からみても好ましく、現在までにMg_2Ni合金やMg-10%Ni合金が提案されている。しかし、マグネシウム系合金は蒸気圧が高く簡単には合成できない。例えば純度99.9%のMg-Ni合金を得るために少なくとも5回以上の再溶解手順を必要とし,さらに得られた合金は活性化処理(水素の吸蔵・脱蔵を温度と圧力を制御し10数回以上繰り返す操作のこと)が不可欠である。そのためエネルギー,時間を浪費し合金価格の上昇を引き起こしていることが実用化を阻む一大要因となっている。 1995年,申請者は新規の方法によりこの合金を合成することにはじめて成功した。すなわち、マグネシウムとニッケル微粒子を均一に混合し加圧成形し,常圧不活性雰囲気(Ar)下で加熱すると発熱を伴う固体間反応(2Mg+Ni=Mg_2Ni)が自発的に伝播し,マグネシウムが気化することなく、一度で高純度合成が完了することを確認した。 本研究プロジェクトでは、原料粉末金属から、直接それも瞬間的に短時間で金属水素化物を製造するプロセスの研究に着手した。具体的にはマグネシウムおよびニッケルの原料金属粉末を十分に混合した後圧粉成形し、高圧水素雰囲気中で加熱することによりMg_2NiH_4の合成を試みた。その結果予想通りこの合金を得ることに成功した。この方法は活性化処理が不要であることから省エネルギーの観点から極めて魅力的であると結論づけることができる。さらに、この反応機構を解明するために、熱伝導率の変化、形態変化および反応速度を調査した。
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