研究概要 |
力学特性の優れた材料を開発するには優れた力学特性を生かすような複合化が必要である。合金元素が非平衡状態で強制的に固溶されているアモルファス合金において、その粉末の焼結体は力学特性に優れた合金となる可能性がある。本研究では、Ni_<60>Mo_<30>B_<10>アモルファス粉末合金をホットプレスによりバルク結晶化し、熱処理を施すことにより、硼化物、Ni-Mo系金属間化合物、Ni固溶体を分敵させた複合材料を作製し、これらの材料の高温を含めた力学特性について検討した。ホットプレス状態(HP材)での、室温における圧縮強度、硬さ、破壊靱性はそれぞれ、2.98GPa, HV870, 14.6MPa√mとなった。HP材に加え、その後1100℃で溶体化処理した材料をST材、ならびにST材を800℃で時効処理したSTA材の3種類を供試材とする。HP材、ST材、STA材の破壊靱性はそれぞれ14.6, 22.1, 9.2MPa√mとなった。この破壊靱性の相違は組織によるき裂進展挙動の相違として反映されている。分散物はHP材、ST材、STA材では、Mo_2NiB_2であるが、母相はST材では破壊靱性と延性の高いNi過飽和固溶体、STA材ではNi_3Moである。き裂進展のその場観察では、STA材とHP材において、き裂の進展はほぼ直線的である。硼化物近傍で停止することなく粒内割れを呈している。一方、ST材では、き裂は比較的蛇行している。硼化物近傍では、一時停留し、粒内を進展せず、その界面を進展している、破面観察はき裂進展のその場観察と類似し、STA材とHP材では、擬へき開割れを呈し、STA材では、微小デインプル割れを呈していた。試験中同時に測定したAEでは、STA材とHP材では、破断荷重手前でAEは急増するのに対し、ST材では破断荷重の相当以前より微小デインプル割れに伴なうAEが観察された。いずれにしても、破壊靱性、き裂進展のその場観察、AE測定、破面観察の結果がほぼ対応していた。
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