研究概要 |
β型チタン合金のω相変態機構解明のために、電子顕微鏡内時効挙動のその場観察を暗視野像法および高分解能法を用いて実施した。暗視野像法の結果、焼入れω相は加熱途中にほとんど消滅することが明らかになった。しかし、消滅せずに残ったいくつかの焼入れω相を核として、時効ω相が成長することが観察された。高分解能法により、焼入れω相の消滅や母相からのω相構造の生成は5〜10秒の短時間に起こることが観察された。 ω相形成のための応力の影響について調べるために、引張応力負荷状態で時効加熱をおこなった。また、種々の大きさの静水圧力を負荷し、暗視野像法と高分解能法によるω相粒子生成の観察を実施した。その結果、降伏応力の約半分の応力を負荷することにより、時効ω相の核生成数は著しく増加するが、ω相粒子のサイズは減少していることがわかった。これらの結果から、微細なω相粒子を高密度に生成するためには応力負荷状態での時効が、単に時効するよりも効果的であることがわかった。静水負荷は、0.5,0.7,1.0,1.5GPaの圧力を10.8ks間それぞれ実施した。これらの負荷試料について、高分解能電子顕微鏡法により原子レベルでのω相構造の生成を調べた。その結果、0.7GPaでω相の初期構造である〈111〉方向に0.28nm間隔の原子配列が多数観察された。0.5GPaの圧力では、同様の構造がわずかしか観察されなかったので、ω相生成の臨界静水圧は0.5GPaと0.7GPaの間の値である、ものと考えられた。また、静水圧力の増加により、形成されるω相構造の大きさが増加することが観察された。静水圧負荷はω相構造の生成と成長を促進することが明らかになった。静水圧負荷もまた、ω相粒子を高密度に生成させるために有効な方法であることが明らかになった。
|