研究概要 |
高温高圧水中での電気化学測定に使用できる新しいタイプの電気化学電位(Electrochemical potential,ECP)センサを開発し,523Kまでの温度における熱力学的動作特性を確認した。主要な成果は次のようにまとめられる。 1.高温高圧水用固体電解質ECPセンサの作製:イットリア安定化ジルコニア(ZrO_2-8mol%Y_2O_3)板の裏片面にNi-NiO薄膜基準電極を形成した電極部と,pH既知のリン酸塩緩衝溶液を含浸したアスベストで構成されるpH緩衝機構部,および高温酸化処理ジルカロイボディーから成るECPセンサを試作した。 2.試験溶液のpHによる起電力変化の測定:試験溶液のpHを種々変化させ,473〜523Kの温度範囲におけるAg/Agcl(0.1kmol・m^<-3>KC1)内部照合電極基準の電位を測定した結果,本センサの電位はpHによらず常に一定であることが明らかになった。 3.起電力の温度依存性の測定:473〜523Kの温度範囲における本センサの電位は,2395-5.37T(mV vs.SHE)で表されるNemst型の温度依存性を有することが分かった。 4.高温における長期耐久試験:開発したECPセンサとPt水素電極とを組み合わせ,電位の経時変化を長期間に渡って測定した結果,電位のドリフトは小さく,センサは長期安定であることが分かった。 5.ステンレス鋼のアノード分極曲線測定:試作したECPセンサを用いて,473〜563Kの0.5kmol・m^<-3>Na_2SO_4中におけるSUS304ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定した。得られた分極曲線はAg/AgCl内部照合電極を用いて測定したものと一致し,固体電解質ECPセンサが電気化学測定用照合電極として機能することが確かめられた。
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