研究概要 |
本研究の目的は,理論が簡単で,プログラミングが比較的易しく,計算時間が短く,かつ汎用性のある解析手法の開発である。この目的を達成するために考えられたのが,有限スラブ法である。この手法の概念は,被加工材料の塑性変形領域は材料流動によりいくつかの領域に分割することができ,それぞれの領域はさらに有限スラブに分割することができると仮定することから成っている。この概念に基づき,軸対称問題に対する基礎関係式を誘導した。これを軸対称を基盤とする3次元問題に適用するためにサブスラブという概念を導入した。また,直角座標系に対する3次元問題の解析に対する基礎式を導いた。 基礎式は連立一次方程式で表され,これを解くための過程をオブジェクト指向型のプログラミングを用いて,汎用性のある計算ソフトとして構築し,ユーザーは本ソフトをブラックボックスとして用いることができるようにした。すなわち,ユーザーは関心のある加工問題の解析にのみ集中して,解析できる。 冷間鍛造の基本的加工である,リング圧縮問題,円柱素材のすえ込み加工問題に適用し,初等解析法,上界法による結果と良く一致することを確認した。ついで,応用例として突起成形,平歯車など典型的な鍛造加工問題に適用し,実験並びに従来の解析法による結果と比較し,よい近似度の結果が得られることを確認した。 以上の結果を総括し,本研究により開発した有限スラブ法は,当初の目的をほぼ達成する簡易解析法とし有用であると結論できることができた。なお,鍛造加工される製品形状は極めて多岐にわたるが,本研究で開発した方法は現在はまだその適用範囲が広くない。今後,適用範囲を広げるべくさらなる研究が必要である。
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