研究概要 |
放電加工された超硬合金を改質する方法として酸化現象を利用することを考えた.この方法は,超硬合金を空気中で高温にし変質層の存在する表面層を酸化させることにより,選択的に柔らかくして除去しようとするものである.本研究は,この新しい表面改質方法の確立を目的として,以下に示す3項目に関する結論を得た. (1)超硬合金の酸化現象の解明 (1)超硬合金を高温に加熱したときに生じる酸化物は面の法線方向にほぼ均等に成長し,母材との剥離性に優れている.また,その酸化物はコバルトとタングステン酸化物とそれらの複合酸化物CoWO_4である. (2)酸化物の生成量は,加熱温度が高いほど,加熱時間が長いほど多くなり,それに従って酸化層も深くなる.一例として保持温度800℃の場合,酸化速度は5μm/minである. (2)放電加工面の改質 (3)超硬合金の高温酸化現象を利用することで,クラックや微小穴などの放電加工変質層のみを酸化させることにより選択的に柔らかくし,それを容易に除去することができた. (3)ワイヤカット放電加工された凸型金型への適用 (4)保持温度800℃,保持時間2分間の誘導加熱処理でワイヤカット放電加工面に存在していた表面欠陥を完全に除去することができた. (5)コイルの長さを試料の2倍程度とすることで試料各部の除去量が均一になり,内径およびピッチを小さくするほど加熱効率が良くなる.これらのことより決定して最適コイルを用いて,試料全体にわたって均一に所望の除去量を得ることができた. (6)本処理方法をワイヤカット放電加工された凸型形状の金型に適用し,極めて短時間でその放電加工面を準鏡面状態に仕上げることができ,本処理方法の実用性を示唆した.
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