研究概要 |
研究の目的:アルミニウムに添加した時その合金強度を著しく向上させるが、固溶限が小さいTi,Fe,Ni,Cr,Zr,Cuなどの遷移金属元素をメカニカルアロイング(MA)法によってAl中に多量に強制固溶させた、ナノ結晶粒から成る合金粉末あるいはアモルファス粉末を作製し、2〜5GPaの超高圧下、200〜400℃の低温で非平衡相を保持したまま固化成形する。超高圧下では拡散が抑制されるため、強制固溶体の分解やアモルファス相の結晶化は阻止されて非平衡相のまま固化成形できる。また、超高圧は粉末粒子間の凝集を促進し、ボイドの低減に有効である。成形されたナノ結晶強制固溶体中のCuおよびMg原子の不純物拡散に関する貴重なデータを得る。 研究成果:Al-12at%Ti混合粉末およびAl-12at%Ti-(3〜20)at%X(X=Fe,Ni,Cr,Zr,Cu)混合粉末を高エネルギー遊星ボールミルを用いてMAした結果、Al-12Ti 2元系およびAl-12Ti-Cu 3元系では強制固溶体が主に得られたが、Al-12Ti-X(X=Fe,Ni,Cr)3元系ではアモルファス相が得られた。Al-12Ti-Zr 3元系では2種の金属間化合物が得られた。また、MAとその後の超高圧・低温固化成形によって得たナノ結晶強制固溶体中のCuおよびMgの不純物拡散の実験結果では結晶中拡散の活性化エネルギーの値は粒界拡散のそれより低く、表面拡散の値に近い。ナノ結晶粒界拡散の頻度因子の値;2.4×10^<12>m^2/sは表面拡散と液体拡散の値の中間にあり、ナノ結晶体の粒界構造は通常の結晶粒界よりなり間隙の広い構造になっていると考えられる。これらの研究成果を学会論文2編に報告したメカニカルアロイング法で作製したAl-Ti系強制固溶体のナノ結晶から成る合金粉末を573Kおよび623Kで2GPa以上の高圧下で非平衡のまま固化成形することに成功した。得られた成形体(平均結晶粒径、14nm)の相対密度は約98%であり、そのヴッカーズ硬さは約400を示した。この値は工業用純アルミニウムのそれの約20倍になる。また、成形体の熱処理において、焼鈍温度、573K以下では40時間の長時間加熱に対しても組織と硬さはほとんど変化せずに安定であった。これらの研究結果の詳細を学会誌に発表予定である。
|