研究概要 |
純Al粉末に金属酸化物を添加してMA処理を行って,酸素の置換反応を起こさせることによりAl_2O_3とアルミナイド化合物粒子を固体Al中でin situに生成させることができることを確かめた.添加する酸化物としては,高融点金属を含む遷移金属の酸化物:Cr_2O_3,HfO_2,MoO_3,TiO_2,WO_3,ZrO_2を用い,これら酸化物が還元されてアルミナイド化合物とAl_2O_3粒子の分散材料が得られることをX線回折により明らかにした.Alに添加した場合液相線温度が急激に上昇するためと,Alとの融点差と比重差が大きいために,溶解鋳造による合金化が困難な合金系であるAl-Cr,Al-Hf,Al-Mo,Al-Ti,Al-W,Al-Zrにおいて,このような酸化物添加MA法が有効な合金化法であることが示された.この際固相反応の進行度合を適当に調節することによりナノ粒子の分散強化材料が得られることが期待されるが,このような固相反応の進行により硬さの増加が得られる場合が多数確認された.すなわち,MA粉末から固化成形したバルク材において,高温加熱時の硬さの増加が観察され,この硬化を利用して固化成形後に加熱処理によって高強度化を図れる材料が得られることが示唆された.例えば,MoO_3を添加した材料においては,熱間押出材を873Kで40ksの加熱することによってHV75の硬さの増加が起こり,HV257に達した.また,その際の加熱にともなってMoAl_<12>,Al_2O_3,Al_4C_3からの回折線強度の増加が確認された.これらの材料の多くは常温で500MPaを越える高い引張強さを示しており,固相反応によってin situに生成した微細粒子の分散強化が有効に作用していることを示している.
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