研究概要 |
圧延界面の直接観察装置を開発試作した.2段式圧延機の上部ロールにCCDカメラをロールと同軸に埋め込み,受圧面に強化ガラスを円筒面に仕上げたものを配置し,光路をミラーにより90°曲げることにより観察が可能となった.信号は軸端部からスリップリングを介して取り出した.ディジタル・ビデオレコーダーとの組み合わせで長時間にわたり,33ms間隔の画像取得が可能となり,安定した画像が得られた. 粘度を変えた3種類のパラフィン系基油を潤滑剤として用い,純アルミニウム板材(2mm厚さ)を室温で5〜15%圧延することにより次の結果を得た.圧延速度は0.167m/sである. (1)ロールバイトにおいては膜厚の大小(深さの大小)と関連つけられると思われる輝度のコントラストを生じている.その形状は圧延方向に平行な成分が多い.なお塑性流体潤滑理論では表面粗さより一桁以上小さな油膜厚さとなる.したがって混合潤滑のモデリングを行わなければ導入油量の予測は不能である. (2)ロールバイト出口部では樹枝状組織がより明瞭に圧延方向に発展した明瞭な形状となる.これは固化あるいは固化に近い粘度の高い状態における高圧域から低圧域への噴出現象によるものと考えられる. (3)ロールバイトから出た以降も緩和現象を示していることから潤滑剤の固化や粘度変化の動特性が必要な性質として考察されねばならないことを示唆していると思われる. (4)鏡面仕上げの板材でも圧延ロール条痕がある板材でもほぼ同様の結果を得た.また圧印により独立した穴型のピットをあらかじめ与えた試験片でも樹枝状の高粘度帯と思われる構造が発生した.これは潤滑剤の導入と不均一な高粘度帯の形成に表面の微細表面形状を超えた機構が支配していることを示唆する.
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