研究概要 |
高強度のパ-ライト鋳鉄は,試料表面の欠陥感受性が鋭く,曲げおよび衝撃特性に劣ので,試料表面から軟質のフェライト組織を発達させて傾斜組織を有する球状黒鉛鋳鉄(フェライトリム球状黒鉛鋳鉄)を開発した.前年度は銅などの合金成分の範囲を明らかにし,また最適熱処理条件を検討した.本年度は以下のような結果を得た. 前年度の懸案事項 本年度は合金成分の特定化を行った結果,銅は0.4〜0.5wt%がもっとも適切であり,また熱サイクル条件(ステップ冷却法)は,充分に現場生産を行えることが明らかになった. 機械的性質 曲げ試験及び衝撃試験を行った.本研究で開発したフェライトリム球状黒鉛鋳鉄は同じ強度をもつ通常の鋳鉄と比べて,曲げたわみが非常に大きく破壊するまでに大きなエネルギを必要とすることがわかった.また,平滑材及び鋳鉄の表面欠陥を想定した切欠材について衝撃試験を行った結果,低温においても破壊までのエネルギが非常に大きいことが明らかになった. 応用 本研究におけるフェライトリム球状黒鉛鋳鉄は,工場現場でも安定に生産でき,これを自動車用のナックルステアリングに応用したところ,従来の製品よりきわめて優れた特性を有することがわかった.
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