研究概要 |
本研究では、蛍光物質、液晶の材料、CO_2ガスなどの光還元触媒用の機能性材料として注目されているZnS,CdS及び太陽電池の原料となるCuSなど金属硫化物微粒子の噴霧熱分解法による製造を実験及び理論の両方より検討した。 噴霧熱分解法による微粒子の製造実験において硫化物微粒子の性状および形態が、1)噴霧液滴のサイズ、2)噴霧溶液のプリカーサ(溶質)濃度、3)液滴の加熱速度および加熱時間などによりどのように変化するかを検討した。具体的には、金属硫化物の組成のプリカーサを含む溶液を調製し、これを超音波噴霧装置および静電噴霧装置より霧化させ、生成された液滴を適当な温度に設定した管状の電気炉に導入し、出口で生成粒子を補集した。X線解析及びSEM写真の結果によると、プリカーサでのCu,Zn,CdとSの混合比を変えることにより広い温度範囲で単相のCuS,ZnS,CdS粒子を得ることが出来るという興味深い結果を得た。 一般に噴霧熱分解プロセスにおいてはこのように粒子製造過程の考察は実験的なものばかりであり数値シミュレーシオン等による理論的な考察が欠けていた。そこで申請者らは数値計算プログラムを作成し微粒子の製造を次の手法で評価した。1)液滴の蒸発による液滴内の溶質濃度の分布及び反応炉内の水蒸気の分布を拡散方程式により数値的に解き、液滴径の変化を求め、実験値と比較した。2)液滴内の溶質の熱分解反応による反応生成物の濃度を求め、粒子内の過飽和比の分布より、核生成が起こる範囲を規定し、粒子の形態を定性的に評価した。ここで実験は機能性微粒子のプリカーサとしては比較的物性がわかっているZrO_2微粒子の製造を例にとり行い、実験結果を計算結果は良く説明できた。
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