メソポアを有する多孔体は、従来型ゼオライトより大きな細孔を持つため、新しい形状選択性触媒として期待される。そこで、本研究では、メソポーラス物質の存在下で高揮発分の石炭を熱分解し、そのモレキュラーシ-ブ機能を利用して、発生する重質タールを特定の分子サイズを持つ液状成分に変換することを目的とした。 メソポーラスシリカとしては、稲垣・福島らの製造法に準じて合成したFSM(Forded Sheet Mesoporous)多孔体を用いた。550℃で焼成して得たFSMを-196℃でN_2吸着測定を行い、これより求めた平均細孔径と比表面積はそれぞれ約10nmと約1000m^2/gであった。モルターグラインダーを用いて、この多孔体粉末と高揮発分亜歴青炭粒子とを所定の割合で物理的に混合し、この混合物をペレットに成型後、粉砕して32〜60メッシュに揃えた試料を熱分解に供した。固定床装置を用いて、試料1gを高純度He気流中600K/minで750〜900℃まで加熱し、無機ガスや低級炭化水素ガスはGCで分析し、液状生成物はGC-MSで分析した。FSM/石炭の重量比0.3〜0.5では、熱分解生成物中のガスの割合は無触媒の場合とほとんど変わらなかったが、ガス組成は平均しオレフィンが増加した。一方、重質タール分の割合は触媒存在下で減少し、その結果、2環〜3環の液状芳香族成分が増加した。予想したように、石炭から発生した重質タールがメソポーラス多孔体上で分解して軽質化されることが明らかとなった。しかし、液状生成物の組成が複雑であるためその解析が充分でなく、現段階で、タールの分解がFSMの外表面で起きているのかポア内で進行しているのかを判断することは困難であった。熱分解後のX線回折測定結果からは、FSMの結晶構造はほとんど変化していないので、重質タールがポア内部まで侵入できるならば、モレキュラーシ-ブ機能による分解生成物のin situ分離が期待される。今後の検討課題である。
|