研究概要 |
石炭を高温でガス化する場合の最大の問題点は灰分の溶融である。本研究の目的は灰分の組成及びその構造を解明してその溶融挙動を明らかにし,灰分の溶融が石炭のガス化反応速度にどのように影響しているか,その相関関係の規則性を見出すことであったが,研究前半の灰分の溶融挙動の解明に時間と資金を使い果たし,反応性との相関は必ずしも明確に出来なかった。しかし灰分の溶融挙動,特に灰分の軟化点,溶融点については,従来の見解と異なる明確な結論が得られたので,本報告書では主として灰分の溶融挙動について記述する。 研究の手法としては無機化合物,鉱物質を調合した合成灰分をつくり,微小坩堝で溶かしてその模様を顕微鏡で観察するとともに,原料及び溶融灰分のX線分析を行い,結晶状体の変化を観察した。また灰分中に過剰に存在する単体シリカについても同様の実験を行い,結晶状態の変化を調べた。 以下これらの結果について要約して述べる。 1.石炭の灰分は各種鉱物質と単体シリカの混合物である。このうち単体シリカはN_a等の不純物が存在するとガラス状のアモルハスシリカとなり,流動性を持つようになる。 2.灰分中の結晶性シリカは加熱しても容易に溶融せず,結晶構造を変えて変態する。不純物を含まぬアモルハスシリカを加熱すると,その温度に平衡した結晶性シリカになる。灰分の軟化点は1200〜1300℃台に集中しているが,これは石英型シリカがトリジマイト型シリカに変態する温度で,石炭灰分の軟化点とは単体シリカの変態点である。 3.灰分中の各種鉱物質間で共晶現象を起こすと結晶性は失われ,各鉱物質の融点より200〜300℃低い溶融状態の共晶液になる。共晶体組成よりずれた鉱物質は固溶体となり,共晶液中にスラリー状態で存在する。灰分中の鉱物質間の共晶温度は1300〜1400℃台であり,石炭灰分の溶融点とは灰分中に存在する鉱物質間の共晶点である。
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