研究概要 |
^1H MAS NMRを用いてH-ZSM-5のプロトンの動的な性質を,25℃から200℃まで測定温度を変化させることによって調べた.温度が高くなると,酸性プロトンに帰因するピークはブロードニングを起こし,温度が更に高くなるとシャープな線形へと変化した.ブロードニングが起こる温度よりも高い温度では,ピークの線幅が試料の回転速度に依存した.また,酸性プロトンに帰因するピークのスピニングサイドバンドは温度が高くなるにつれてブロードニングを起こした.ピークのこうした線形の変化は,プロトンが運動している場合に理論的に導かれるピークの線形の変化とよく一致した.一方,ケミカルシフトは温度に依存せず,一定であった.^1H MAS NMRの線幅の変化はプロトンの運動性を敏感に反映し,動的な性質はケミカルシフトに現れてこない.プロトンは100℃付近から酸素イオンの上を動き初めて非局在化する。 Na^+を僅かに導入することによって,プロトンの運動性は著しく低下する.プロトンの運動性は触媒活性やOH基自身の反応性に影響を与え,運動性が高いプロトンは高い触媒活性や反応性と関係している可能性が強い. 一方、H_3PW_<12>O_<40>及びAg_3PW_<12>O_<40>のプロトンの動的挙動についても調べた。H_3PW_<12>O_<40>のプロトンは室温付近では一つの酸性イオン上に固定されているが、200℃付近から非局在化する。Ag_3PW_<12>O_<40>のプロトンは、銀イオンが水素によって還元されることによって発現する。このとき、発現する酸性プロトンには二種類あるいことが^1H MAS NMR測定によって明らかとなった。これらのプロトンは80℃付近で交換を起こす。
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