研究概要 |
PO_4四面体が6つ環状に連なったヘキサメタリン酸イオンを基盤とし、新規化合物として芳香族アミン、脂肪族アミンで修飾した新規へキサメタリン酸塩を合成した。これら化合物の有機物は構造中、有機カチオンとして存在し、2次元的な水素結合ネットワーク層が構築され、結晶は2次元的方向性を示す。また、軸不斉を持つ1,8-ナフタレンジアミン(C_<10>H_<10>N_2)とP_6O_<18>6-環を活性金属(Co,Ni)に配位させた新規な有機無機金属錯体[(C_6H_5NH_3)_2M_2(C_<10>H_<10>N_2)_4P_6O_<18>4H_2O(M=Co,Ni)]を合成した。以上のようにヘキサメタリン酸塩の合成により活性点となりえる金属イオンに直接構造環境を制御する配位子を導入することができ、またキラルな物質を用いることで特異な構造環境が得られることが判明した。 その一例として[Cu(bpy)_2][Cu(bpy)][Cu(bpy)(py)]P_6O_<18->10H_2Oでは、一個のへキサメタリン酸環にリン酸素への配位環境が異なる3種の銅イオンが存在し、それ自身でキラル構造を形成した。この結晶ではpyの配位能がbpyの3分の1程度と低いにもかかわらずbpyとpyの2種類の配位子が共存していた。また、これら配位子だけでなく金属イオンの配位子場も高次分子構築に重要な寄与をしていることから、この化合物の構造形成は単純な錯生成メカニズムにより成り立っているのではなく、ヘキサメタリン酸アニオンが構造の自由度を利用してその形状を大きく歪ませ、周囲の環境に適応しているためであることが分かった。金属周辺の局所構造のみならず固体全体にいたるまで高度に組織化された新しい自己集合性超分子錯体といえよう。 さらに[Co_3O(OH)_3(OAc)(H_2O)-(bpy)_3]_2[Co_2(P_6O_<18>)_2]では、平面状の二個のへキサメタリン酸環が面を合わして接近し、その間で二個の2個のコバルトイオンがヘキサメタリン酸環面のリン酸素各々3個に配位し、サンドイッチ型の陰イオンを形成した。これの対陽イオンはキュバン構造の金属-酸素複核イオンであり、きわめて複雑な自己集合性超分子錯体を形成していることが分かった。
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