研究概要 |
本研究では,耐熱性の低いPdの安定化を目指して,Pd含有ペロブスカイトの合成およびPd担持ペロブスカイトにおけるPd-ペロブスカイト相互作用を検討し,それらの触媒特性を調べた. 1.Pdのイオン半径や超格子(規則化)構造を考慮して,Pdの置換の可能性のあるBa_2CaWO_6,Ba_3Bi_2CaO_9,La_3CaNbO_9,Ba_3CaNb_2O_9,LaYO_3等を設計し,CaやYイオンの一部をPdで部分置換することを試みた.X線回析測定の結果,Ba_3Bi_2Ca_<0.8>Pd_<0.2>O_9においてのみPd単独相(Pd,PdO)のピークが認められず,Pd固溶体の生成が示唆された. 2.Ba_2Ca_<1-X>Pd_XWO_6において,Pd単独相はBa_2CaWO_6粒子上に表面層が酸化されたPd粒子として担持されており,そのPd相はNO分解活性点として働くことがわかった. 3.ペロブスカイトの低温合成が可能なリンゴ酸添加法を用いたLaY_<1-X>Pd_XO_3の合成においては,Pd固溶体は得られなかったが,従来1250℃での焼成が必要とされている斜方晶LaYO_3が,La_4PdO_7の副生とともに950℃で得られた. 4.Pdを酸素の吸脱着(レドックス)能のないLaAlO_3ペロブスカイト上に担持した場合,Pdのレドックス特性,触媒特性はPd/Al_1O_3と変わらないのに対し,レドックス能の高いLaCoO_3,La_<0.8>Sr_<0.2>CoO_3に担持した場合には,Pd-ペロブスカイト間に強い相互作用が発現し,Pd,ペロブスカイト何れの性質も変化した. 5.相互作用の結果,Pd(O)のPdへの熱的および水素による還元に対する安定性は大きく向上した.しかし,この性質の変化は,レドックス機構で進み還元過程が律速度段階であるメタンの酸化反応やNO直接分解反応に対する活性を低下させる方向に働くことがわかった.
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