本研究では、酸性条件下でも水素を生成する耐酸性水素発酵菌Enterobacter aerogenes HO-39の固定化により水素生産能の向上を図ると共に、中和用のアルカリ添加量を削減できる経済的な高効率水素生産システムの確立を目的として、本菌株の最適な固定化法および固定化菌体を用いる連続培養による水素生産特性の検討を行った。 その結果、包括法および吸着法で調製した種々の固定化菌体の中では、寒天および多孔質ガラスビーズに固定化したもの回分培養での水素生産に優れていることが明らかとなった。また、寒天ゲル固定化菌体の場合には効率的な水素生産のために培養液の撹拌が不可欠であったが、多孔質ガラスビーズ固定化菌体の場合には無撹拌条件下でも比較的良好な水素生産特性が得られた。 また、寒天ゲルおよび多孔質ガラスビーズでの固定化菌体を用いたpH非制御下での連続培養実験では、多孔質ガラスビーズ固定化菌体を充填したカラム型リアクターでの水素生成速度とグルコースからの水素生成収率は、寒天ゲル固定化菌体を添加した撹拌型リアクターのものよりも優れていることが明らかとなった。さらに、多孔質ガラスビーズ固定化菌体のカラム型リアクターでの水素生産では、培地滞留時間が1時間の条件下において約850ml/l-culture/hという水素生成速度を安定して実現できることが分かった。 以上のように多孔質ガラスビームに固定化しE.aerogenes HO-39を充填したカラム型リアクターによる水素生産法は、高速水素生産が可能であり、アルカリ添加量の少ない経済的な水素生産法であることから、今後、その実用化研究が期待される。
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