研究概要 |
Pseudomonas syringaeのエチレン生成酵素(ethylene-forming enzyme,EFE)は2-オキソグルタル酸→エチレン+3CO_2を触媒する。すなわち、この反応によって、TCA回路中間体が奪われ、CO_2が無駄に放出されることになる。本研究では、EFE遺伝子を染色体に組み込んだ組み換えラン藻に、CO_2のリサイクル系(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼと炭酸脱水酵素)を付与し、CO_2からエチレンへの変換効率を増すことを目的とした。 [方法]Synechococcus sp.PCC7942 R2-SPcの染色体上のpsbAI遺伝子のD1タンパク質コード領域にefe遺伝子を転写融合したpsbAI::efe遺伝子をもつIEK2-2株を作成した。pUC303上にpsbAI::efe遺伝子をもつ自律複製型プラスミドをもつIEK2-2を形質転換した株も用いた。 [結果](1)宿主としてSynechococcus sp.PCC7942 R2-SPcとIEK2-2の株を用い、EFE,PEPC,CA遺伝子をポリシストロニックな型で含む自律複製型プラスミドを用いて形質転換を行い、合計6種類の組み換えラン藻を得た。(2)6種類の形質転換体のEFE,PEPC,CA活性の測定を行い、PEPC、CA遺伝子を持つ株でPEPC,CAの活性が認められた。また、EFE活性とPEPC活性の間には正の相関があった。(3)各形質転換体のin vivoエチレン生成比活性、PEPC比活性はともにpsbAIプロモーターの特徴である強光阻害を受けた。(4)PEPC,CA遺伝子の導入によるエチレン生成量への影響は、IEK2-2を宿主とした組み換え体で認められ、CO_2固定された炭素からエチレンへの炭素回収率はIEK2-2では8.7%であったが、IEK2-2/pEXE3Δ8/PEPC株では13.7%まで増大した。
|