研究概要 |
本研究の目的は,均一液液抽出法を前段濃縮法として用い,各種機器分析法と組み合わせることによって新しい高性能分離・検出システムを開発することにある.二カ年の研究期間で得られた成果は,次のようである. 1.均一液液抽出法の基礎となる新しい分離現象の探索:フッ素系界面活性剤(パ-フルオロオクタンスルホン酸)の対イオンとして9種類の金属イオンを検討した.その中では,特にカルシウムイオンのみがイオン対相分離現象によって液状析出相を生じた.この析出相が水分を多量に含有することから,本抽出法は,生体物質の抽出に適していることが分かった. 蛍光X線分析法(XRF):高原子価金属イオン{Ti(IV),V(V),Zr(IV),Nb(V),Ta(V)}の選択的濃縮分離と10^<-8>Mレベルの高原子価金属イオンのXRFによる同時定量法におよびAl-Cu合金中におけるTi,Zr,Vの定量法を確立した. 全反射蛍光X線分析法(TXRF):パ-フルオロオクタン酸のpH依存相分離現象に基づく均一液液抽出法をTXRFの前段濃縮法に応用した.本抽出法では,多量の溶融剤の影響を受けずに目的元素のみを数μLに濃縮できた.更に,セラミックスや黒鉛中に含まれる微量不純物元素(Fe,Ni,Cu等)をTXRFにより同時定量した. 高速液体クロマトグラフィー:水/酢酸/クロロホルム三成分系のpH依存相分離現象に基づく均一液液抽出法をHPLCの前段濃縮法に応用した.超高感度キレート試薬テトラキス(4-ピリジル)ポルフィンを用いてppbレベルの銅(II)とパラジウム(II)の吸光検出-HPLCを開発した. 以上,当初計画をしていた高性能分離・検出システムとして蛍光X線,全反射蛍光X線およびHPLCへの応用が実証され,十分な成果を挙げることができた.
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