研究概要 |
本研究では,局所誘電泳動を利用したこれまでの手法を全く異なる新しいパターンニング方に関して検討した. 細胞の懸濁液を目的の基板と,パターンの型となるマイクロアレイ電極ではさみ,電極に細胞が反発する周波数領域の交流を印加した.マイクロアレイ電極はITO基板を用いてフォトリソグラフィーおよび電解エッチングにより作製した.電極幅を20-80μm,ギャップ幅を20-100μmとした.用いた細胞は,球状(直径,約10μm)のマウスミエローマであり,懸濁濃度は1×10^7cell/mlとした. 細胞が負の誘電泳動力(反発力)受ける周波数領域の交流を印加すると,細胞は電気力線の密度の低い方へと移動し,その結果,細胞は電極の真下の部分へと集合し,電極のパターンと同じ形に配列した.パターン形成率は,印加電圧,周波数,電極幅,ギャップ幅,基板-電極間の距離に依存した.電極幅50μm,電極間隔80μmのアレイ電極を用いて検討したところ,印加電圧7V,周波数10kHz,基板-電極間距離50μmの場合,パターン形成率は90%以上となった.この場合には,パターンは細胞3個程度の幅であったが,電極幅20μmのアレイ電極を用いた場合には,細胞を一列に配列させることも可能であった.今回使用したミエローマ細胞は基板接着性がないため,電圧印加を停止すると細胞のブラウン運動のためパターンがぼやけ,約20分後にはパターンが消失した. この手法では電圧印加後瞬時に操作が完了する上,基板側への前処理がいらないため,あらゆる平面上へのパタ-ニングが可能であり,一度作製した電極は何度でも使用できるので同じパターンを複製することも容易であるという特長を有することが明らかとなった.
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