研究概要 |
五酸化バナジウムキセロゲルは高い電位を保ちながら可逆的にリチウム挿入・脱離を繰り返すことができるため高エネルギー密度型リチウム二次電池用正極材料として注目されているが,その基礎的物性に関する知見は充分に得られているとはいえない.本研究では五酸化バナジウムキセロゲルを重合温度(5℃,常温,60℃)及び重合時間等の条件を変化させて合成し,示差熱分析,熱天秤及び粉末X線回折などを用いて層間に含まれる水の量及び積み重なる層の厚み等について検討行い,更にそれらに電気化学的リチウム挿入を試みた. 常温で五酸化バナジウムキセロゲルを合成した際には長時間重合させた場合のほうが,層間にファンデルワールス力によって弱く結合している水の量は少なくなり,層の厚みは増加する傾向が見られた.また,重合温度をかえた場合,温度が高いほど早く重合が進行し,層間に含まれる水の量は少なくなり,層の厚みは増加する傾向が見られた.また,積み重なる層の厚みは重合時間を長くしてもそれぞれの温度においてある値以上増加せず,その値は温度が高いほど大きくなる傾向が見られた. これらそれぞれの試料について電気化学的リチウム挿入を行った結果,重合が進行している試料ほど,すなわち層が厚く積み重なっているほどリチウム挿入量は増加することが明らかになった.これは層の積み重なりが増加することによって,キセロゲル中の全五酸化バナジウムに対するリチウムの収容に関与することのできる五酸化バナジウムの割合が増加するためであると考えられる.
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