研究概要 |
本研究ではLi添加により高抵抗化された透明性,c軸配向性を有する酸化亜鉛結晶に関して,その光導現象を測定した。特に光電導を大きく支配する表面酸素の脱離,還元現象に関して,以下の点を明らかにした。 1) 酸化亜鉛には3.2Vと3.5eV以下との2つのエネルギー領域で光照射による電流励起が起こる。制御された雰囲気下における光電測定より,前者はバンド間の電子励起により,後者は表面酸素の脱離(光還元)により起こることを確認した。すなわち酸素を含む雰囲気では3.5eV光照射-遮断に対して,繰り返し抵抗の現象-増加が起こるのに対し酸素を含まない雰囲気(真空,窒素)では暗所における高抵抗化が起きなかった。また高湿度酸素(空気)雰囲気において光還元,再酸化は加速され,繰り返し特性も安定化した。3.2eV光では雰囲気の効果は小さかった。 2)表面を機械的に研削することにより,光還元による抵抗減少が消失した。一方,試料を600℃で空気中加熱することにより復帰した。表面の変化をXPSで測定したところ,研削した表面ではOHにより被覆されており,これが酸素の脱離を妨げているものと判断した。 3) 光電導ぼ励起率は結晶配向しているc軸方向で大きく,かつ印加電圧に依存した。すなわち,配向軸方向に電圧を印加したとき,電圧が大きいほど励起率が大きく観測された。一方,配向軸に垂直な方向に電圧を印加したときには励起率に電圧依存性は観測されなかった。酸化亜鉛においてc軸が圧電分極軸であることから,圧電効果による格子歪みに伴い,表面酸素が光還元されやすくなったものと判断された。以上より,表面における光還元反応を電界により制御することができることを確認した。
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