研究概要 |
近年、官能基やヘテロ原子を規則的に配置した大環状化合物が、包接、分子認識などの機能を有することが明らかになりつつあり、新しい大環状化合物の合成に関する研究が精力的に行われている。これまでに合成されたそれらの化合物は、クラウンエーテルに代表される酸素、窒素等の陰性のヘテロ原子を含むものが大部分であり、金属陽イオンとの相互作用に基づいて様々な機能を発現する。これに対し、逆にケイ素などの陽性の金属原子を規則的に含む大環状化合物は新しい機能を有することが期待されるにもかかわらず、ほとんど知られていない。申請者は本研究においてケイ素原子を含む大環状化合物の新しい合成法の開発を行なった。 1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジシラシクロペンタンを1mol%のPd(CNBu-t)_2錯体存在下50℃で加熱したところ、環状構造を保ったままケイ素-ケイ素結合が組み替えを起こし、10員環の2量体から最高40員環の8量体までが合計93%の高収率で生成した。この環拡大オリゴメリゼーションによって生成したオリゴマーをGPCによって単離したところ、2量体から8量体までがそれぞれ3,32,34,14,6,3,1%の収率で得られた。これらのオリゴマーはケイ素-ケイ素結合を規則的に有しており、このケイ素-ケイ素結合の反応性を利用した官能基の導入を行なった。3量体及び4量体をトリメチルアミンオキシドと反応させたところ、全てのケイ素-ケイ素結合に酸素原子が挿入した大環状オリゴ(ジシロキサン)が高収率で生成した。また、パラジウム触媒存在下アリールイソニトリルとの反応を行なったところ、良好な収率で全てのケイ素-ケイ素結合にイソニトリルが挿入したオリゴ(ビスシリルイミン)が得られた。
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