研究概要 |
キラルなビナフトールを縮合したインドリルフルギドが,ジアステレオ選択的なフォトクロミズムを示すことを明らかにし,ポリマーフィルム中,旋光度の可逆的変化を示すことを,本年度,米国化学会誌に報告した。 嵩高い置換基を持つフルギド類のコンフォメーションと光反応性の関係,ならびに分子不斉のラセミ化過程を研究し,本年度,日本化学会欧文誌に発表した。 キラルなビナフトールを縮合したインドリルフルギドの無色体は蛍光を出さないが,フォトクロミック反応によって生じる着色体は,紫外部および可視部のどちらの吸収帯で励起しても蛍光を発行することがわかった。可視光照射によって,発行する着色体が完全に無色体に戻るので,この系は,フォトクロミズムによって蛍光発光を完全にオン・オフできる系である。この結果は,本年度,日本化学会速報誌に投稿し,印刷中である。 キラルなインドリルフルギドをネマティック液晶(4-ペンチル-4'-シアノビフェニル(5CB)にドープすると,コレステリック液晶相が誘起され,この化合物のフォトクロミック反応に伴ってコレステリックピッチが大きく変化することがわかった。このことは,本年5月の第33回有機合成化学協会関東支部シンポジウムで発表する予定である。 光を機能制御のスイッチとする有機材料を開発する際に不可欠である,分子の耐久性を向上させる研究を行い,置換基の一部のメチル基をトリフルオロメチル基に替えると,光反応の繰り返し耐久性および耐熱性が大幅に向上することを明らかにした。この結果は,本年度すでに日本化学会速報誌に発表した。 ラセミ化しないフルギドの合成は,現在継続中である。
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