研究概要 |
ラジカル反応を利用し、以下に述べる二つの新規な炭素-炭素結合生成反応を見いだした。 (1)ピロリジン誘導体の合成:ジブロモエタンとヒドラゾンとの混合物に1,2-ジヨードエタンと金属サマリウムとから調製した二ヨウ化サマリウムを作用させるとピロリジン誘導体が得られるという、含チッ素化合物合成の新規な方法を見いだした。この反応では1,2-ジヨードエタンとSm金属より二ヨウ化サマリウムを調製する際に生じるエテンが途中で取り込まれて生成物を与えている。なお生成物はトランス体が選択的に得られている。例えば、1,1-ジブロモエタンと3-フェニルプロパナ-ルのジメチルヒドラゾンとの混合物に対し先に述べたエテンを含む二ヨウ化サマリウムを作用させると、trans-N-ジメチルアミノ-2-(2-フェニルエチル)-5-メチルピロリジンが24%の収率で得られた。 (2)ヘテロ原子置換アルケンに対するラジカル付加:5-ヘテロ原子置換ペンチル基を有するヨードメタンもしくはジヨードメタンに対し二ヨウ化サマリウムを作用させるとラジカル環化により五員環を形成しながら新たにα-ヘテロ原子置換有機サマリウム種を形成し、炭素-炭素結合生成反応を行うことができる。この際、多数のstereogenic centerが一挙に形成されるが、これらを、同時に制御することが可能になった。例えば、1-ブロモ-6,6-ジヨード-1-ヘキセンに対し二ヨウ化サマリウムとヘキサナ-ルを作用させると、1-ヨード-1-(2-ヨードシクロペンチル)-2-ヘプタノールがジアステレオ選択性良く得られた。
|