研究概要 |
三炭糖の1,3-ジヒドロキシアセトンとC1化合物であるホルムアルデヒドとのアルドール反応を検討し、水系で塩化カルシウム/水酸化カリウム触媒を用いた場合には、ヒドロキシメチル基の導入により生じた2-テトルロースが、さらに脱水反応を受けて新規生成物1-ヒドロキシ-2,3-ブタンジオンが合成されることを見い出した。本反応は、メタノール系では、ヒドロキシメチル基の導入のみが進行し、ホルムアルデヒドが1分子反応した2-テトルロースと、さらにもう1分子のホルムアルデヒドが反応した3-ペンツロースが主成分として合成されたので、際立った溶媒効果を見い出すことができた。触媒としては、メタノール系でのヒドロキシメチル化反応にはアルカリ土類金属触媒が有効であったが、水系での1-ヒドロキシ-2,3-ブタンジオン合成反応では,水酸化カリウムのみを用いた場合も塩化カルシウム/水酸化カリウム触媒と同様に有効であった。なお、新規生成物1-ヒドロキシ-2,3-ブタンジオンは、アセチル化して単離を試みたところ、副生成物の2-テトルロースと1,4-ジオキサン型のヘミアセタールを形成し、そのアセチル化物として単離、同定できた。 これに対して、フェノール性エノラートを形成する2,4-ジヒドロキシアセトフェノンを基質としてアルデヒドと反応させると、3位の炭素で高選択的に反応し、1,2-付加体を得ることができた。この高い位置選択性は2-アルケナ-ルに対しても見られ、2H-クロメン型天然物の合成に応用できることがわかった。 一方、ホルムアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを用いて1,3-ジヒドロキシアセトンと水系で処理した場合、1,3-ジヒドロキシアセトンへのヒドロキシフェニルメチル化が進行し、2-テトルロースの4-C位にフェニル基を有する人工糖を合成できた。
|