研究概要 |
アミノ多糖であるキトサンに対する位置選択的な化学修飾法を開発した。これにより,キチンおよびキトサンの特定の位置に糖側鎖を導入し,さらに,生成する非天然型枝分かれ多糖の特性を解析する研究を進めた結果,以下の成果を得た。 多糖受容体として,N-フタロイル化キトサンから3段階の反応で6位のみに遊離の水酸基をもつ誘導体(1),および,その6-トリメチルシリル体(2)を調製した。2とマンノースのオルトエステル体とのグリコシル化反応はジクロロメタン中で,トリメチルシリトリルフルオロメタンスルホネートを触媒として行い,α-マンノシド側鎖を導入した。置換度は最高で0.6程度であった。生成物の脱保護により,キトサン誘導体に,さらに,遊離アミノ基のアセチル化によりキチン誘導体に変換する方法を確立した。得られた枝分かれキトサンおよびキチンは中性の水に溶解し,コンカナバリンAにより効率的に認識された。また,キチン誘導体のリゾチーム受容性,および,キトサン誘導体の抗菌活性も見いだされた。 ガラクトースを用いたグリコシル化反応も同様に進み,β-ガラクトシド側鎖をもつキトサンおよびキチンを調製した。これらの枝分かれ多糖も水溶性,成分解性,吸湿・保湿性などの特徴を示した。 N-アセチルグルコサミンのオキサゾリン誘導体を用いた2のグリコリル化反応は,ジクロロエタン中でショウノウスルホン酸を触媒として行った。この反応では,1を用いても同様な結果が得られた。保護基の除去とN-アセチル化を行うことにより,分岐型キトサンおよびキチンを調製した。これらも水溶性で,かつ,高い抗菌活性を示すことが明らかとなり,機能性多糖として大きな可能性をもつことが確認された。
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