研究概要 |
ポリ(γ-ベンジルL-グルタメート)(PBLG)は液晶相形成能を有するが,ある条件下で流動性を失い,ゲル化する。これはフローリ-の予測とは異なり,高分子液晶ゲル形成過程とそのダイナミクスには,不明な点が多く残された。本研究では動的光散乱法を用いて,PBLG-トルエン系における濃度揺らぎに基づく拡散定数の精密な測定から、準平衡的および非平衡的なゲル形成・会合過程を明らかにしので,以下に報告する。 1.準平衡的ゲル形成・会合過程:等方相,高濃度域の自己相関関数(ACF)には2つのモードが存在し,速いモードは棒状高分子PBLGの協同拡散モードで,土井理論の予測と一致した。もう一つの遅いモードは散乱ベクトルの依存性から,協同的並進拡散モードと帰属され,PBLG会合体の存在が示唆された。このため,ゾル-ゲル転移は核形成・成長型で進行するものと思われる。一方,等方相,低濃度域にある試料のACFはゾル-ゲル転移温度近傍で変調を受けた。これは散乱スペクトルの中心周波数シフトに対応し,転移温度近傍で形成された会合体ドメインの間の過少減衰的粘弾性相互作用が濃度揺らぎモードに重畳したためと始めて解釈された。 2.非平衡的ゲル形成・会合過程:散乱光強度クエンチ後の時間経過に対して指数関数的に増加し,Cahnの線形理論に基づく解析から,スピノ-ダル分解過程に従う相分離過程が進行したことが始めて明らかとなった。この結果,スピノ-ダル温度,バイノ-ダル温度を各溶液濃度に対して決定できた。さらに,散乱光強度の時間分解パターンの散乱ベクトル依存性からフラクラル次元および相関長を求めた結果,溶液濃度の増加とともに,密なゲル構造を反映し,フラクラル次元の増加,相関長の減少が見られた。相関長はクエンチ直後の濃度揺らぎの最大特性波長より小さい値となった。
|