アモルファス有機イオン伝導性材料を設計するための方法論のひとつとして、ポリエーテルと無機塩のハイブリドに焦点を絞り、各種構造のハイブリドを合成し、その特性を評価し、構造設計にフィードバックさせ、最終的に高いイオン伝導度を有する系の設計指針を確立することを目的としている。 具体的には、セグメント運動の大きなポリエーテルとして、ポリエチレンオキシド(PEO)を選択し、これらの末端に各種解離基を導入した。導入した解離基は、カルボキシル基、ベンゼンスルホン酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基、カルバニオン、アンモニウム基、ピリジニウム基、などである。これらのハイブリドを合成、精製し、バルクイオン伝導度を測定した結果、従来のポリエチレンオキシドに無機塩を単純混合した系に比較して、高いイオン伝導度が得られた。また、直流測定による特定イオンの移動度も解析した。その結果、これらの系はカチオンだけを選択的に伝導する系であった。PEO部分の分子量を500〜2000まで適切に制御することにより、系は結晶せずにアモルファスとなり、低いガラス転移温度が設計できたと共に、相転移に基づく大きなイオン伝導度の変化を抑止することができた。
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