研究概要 |
近年のウォーターフロント計画に伴って,海洋構造物は増加する傾向にあり,それらの構造物に対する有効な補修手段として,水中溶接に対する要請はますます高くなっている。現在,実用化の観点からは乾式法が進んでいるが,今後は作業部周辺のセッティングが容易な湿式水中溶接法の占める割合が増加すると考えられる。しかしながら,水中溶接は大気中溶接に比較して溶接部が急冷されるために,基本的にその継手強度は低い。そこで本研究では,湿式水中溶接の冷却特性を数値シミュレーションにより解明する手法の確立を目的として,三次元準定常温度場における問題として差分法により解析する方法を提案した。水中溶接の冷却特性が大気中溶接に比べて極めて特徴的である原因として,母材表面からの放熱特性があげられるが,ここでは母材表面温度と表面熱伝達率の間の関係式を,自然対流,核沸騰,膜沸騰および遷移領域の4つの領域に分けて評価する簡易式を導いた。その評価式を数値解析に組み込むことにより,水中溶接における母材の温度分布,冷却特性を差分法により解析し,水中溶接の冷却過程の基本的な特性を明らかにした。そこでは,従来実験でしか明らかにされていなかった「母材ボンド部の冷却速度が,評価温度の変化に対して数100度においてピーク値を示す」という特性を数値シミュレーションで再現することに成功した。また,解析結果の精度については,混合シールドガスによる湿式水中アーク溶接実験を実施することにより,溶接ボンド部の冷却曲線と冷却速度に関して,実験値と解析値と比較することにより確認した。
|