研究概要 |
豊羽,手稲およびその周辺の熱水性金属鉱床における金銀,レアメタルの賦存特性を主として鉱物科学と流体包有物から検討した. 豊羽多金属鉱脈型鉱床の南西地域では,金銀,およびビスマス,インジウム,テルルなどのレアメタルが局部的に濃集している.金はエレクトラムとして存在し,その含銀量と推定される生成温度の範囲はそれぞれ14〜55atom.%,230〜290℃であり,北西部の前期生成脈の場合と比較すると含銀量は低く,温度は高い.銀はビスマスとともにPb-Bi-Ag鉱物として産するほか,ともに方鉛鉱中に少量含まれる.また,テルル鉱物(ヘッス鉱,含テルルカンフィールド鉱),カンフィールド鉱としても認められる.これらの鉱物を伴う鉱石は,流体包有物から250〜320℃の温度で4〜5%の塩濃度の鉱液から生成したと考えられる.そのほか銀は四面胴鉱に3〜19wt.%含まれることがわかった.インジウムは主にケステライト,黄錫鉱,閃亜鉛鉱にそれぞれ最大6.8wt.%,2.3wt.%,4.8wt.%伴われ,インジウム品位の高い鉱石は上述の銀鉱石と同様な条件で生成したと考えられる. 手稲鉱床と春香山鉱化帯(手稲鉱床の西方約8km)では,金銀はエレクトラムのほか,テルル化物として産すること,ビスマス鉱物を伴うことを特徴とし,流体包有物から推定される鉱化流体の性質も非常に類似している.したがって、K-Ar年代値など既存のデータを総合すると,西南北海道の浅熱水性金鉱床は5〜3.6Maにかけて金銀,テルル,(ビスマス)の高硫化タイプ(手稲,春香山鉱化帯,小別沢)に始まり,3.5Ma前後の金銀,テルル,セレンのタイプ(千歳)を経て1Maの金銀,セレンの低硫化タイプ(光竜)へと鉱化作用の性質が変化した可能性が考えられる.
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