研究概要 |
本研究の平成8年度では,加熱・圧縮成型法による石炭灰フライアッシュの固化を目的として,固化促進材としてシリカフュームあるいは高炉スラグを用い,温度100〜250℃,加圧力0〜10MPaの固化条件でフライアッシュを固化し,成型体を作製した。 フライアッシュとシリカフュームまたは高炉スラグの混合粉末を,所定の配合率(5%〜80%)で混合し,所定量の水酸化ナトリウム溶液(粉末重量に対して15%)を添加し,乳鉢内で十分混練りする。混練りしたものを内径20mmのシリンダー状をした圧力容器に充填し,所定圧力で加圧しながら,所定の温度まで昇温し,10分間保持することによって成型体を作製した。成型体は,圧縮強度,引張強度の測定,密度算出を行った。また,成型体からの主要元素の溶け出しについても調べ,各種固化条件と成型体の性質の関係について検討した。 結果として以下のことが明らかになった。 シリカフュームを代替した場合:加熱・圧縮成型法によるフライアッシュの成型体を作製し,シリカフュームを代替使用することによる圧縮強度の改善を確認した。固化温度140℃,圧力4MPa,シリカフューム代替率10%の条件でフライアッシュを固化すると,通常のフライアッシュモルタルよりも高い圧縮強度,軽量の成型体を得ることができた。また,成型体の浸出試験の結果から,主要元素の溶け出しと圧縮強度の関係があることが推察された。 高炉スラグを代替した場合:比表面積の大きい高炉スラグ(8000cm2/g)を代替したとき230℃,10MPaの条件で64.3MPaの圧縮強度が得られ,200℃では引張強度3.7MPaであった。これらの値はフライアッシュモルタルと比べて密度が小さく引張強度がほぼ同程度,圧縮強度が約2倍と高強度の成型体であることが分かった。 平成9年度では、8年度における小型成型体の最適固化条件を基礎資料として,大型成型体作製装置を用いて直径50mmの成型体を作製し、フライアッシュ成型体の強度試験を行った。特に、本研究では、JISに適合しないフライアッシュ(非JIS灰)の土木材料化について検討した。また、成型体の溶液に対する耐久性、腐食性を検討するために、フライアッシュ粉末についてテフロン製圧力容器を用いて高温変質実験(100〜200℃)を行った。固化条件は、8年度の基礎資料から代替材料として1gあたり8000cm2程度の表面積を持つ高炉スラグ、圧縮圧力10MPa程度、加熱温度150〜250℃程度を採用した。 結果として以下のことが明らかになった。 1) 現在有効利用の進んでいない非JIS灰においても250℃の温度で、軽量(密度;1.80)で高強度(50MPa)の成型体ができた。 2) 高炉スラグの代替率は高いほど強度が増大するものの10%付近で強度が急増(40MPa)することと、経済性の面から20%まで良いと思われた。 3) 引張強度は、225℃までは固化温度とともに増大(2.9MPa程度)したが、それ以上の温度での増加はなかった。また、本研究での成型体の脆度係数は約20となり、普通コンクリートの10と比較してかなり小さい値となった。 4) アルカリ溶液中でのフライアッシュの変質は、反応時間が30分間で反応温度が150℃を超えるとゼオライトが生成することが確認された。
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