研究概要 |
低温感受性の青果物に対して,予め適当な高温を遭遇させると,低温耐性が高められ,低温流通や低温貯蔵中の低温障害が軽減,回避できる場合があり,実用化が期待される.本研究では,低温に弱い果実,野菜を用い,実用化に向けての基礎資料を得る目的で,高温ストレスで誘導するとされる熱ショックタンパク質の生成と低温耐性獲得との関係や生理的変化について明らかにすることを目指した. (1)低温感受性の青果物を用いて,高温処理条件(温度と時間,処理方法など)と低温耐性獲得との関係について調査を行った所,特にキュウリ果実で顕著な高温の低温障害抑制効果を見いだした.40〜55℃,5〜90分の範囲の温度と時間の組合せにより有意に低温耐性が得られるが,処理条件によっては腐敗しやすくなり、実用的には45℃30分程度の狭い条件設定の処理が要求されると思われた. (2)その他,ナス果実,実生の幼植物体(キュウリ,ヨウサイ,モロヘイア,スイ-トバジル等),培養細胞(モロヘイア,スイ-トバジル等)においても調査し,いずれの材料においてもキュウリ果実同様,高温による低温耐性獲得が有意にみられた. (3)一次元電気泳動では高温処理で蓄積が誘導されるタンパク質は特に見いだせなかったが,等電点泳動を組み合わせた二次元電気泳動により,特に低分子領域(14〜20kDa)にいくつかのタンパク質の生成,変化があることを見いだした. (4)熱ショックタンパク質(HSP70)の既知の塩基配列を元に,RT PCR法によりキュウリの熱ショックタンパク質のcDNAの一部を単離,同定を種々試みたが,形質転換に用いる大腸菌の塩基配列が多く入り込みやすく,200bps程度のcDNAが得られたにすぎなかった.
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