研究概要 |
都市近郊林には竹林が頻繁に出現し,竹林は都市近郊林の主要な植生の1つであるが,近年その利用が減少したため放置される傾向にあり,分布や構造が変化しつつあるものと思われる.したがって,都市近郊林の適正な管理のためには,放置された竹林の生態を把握する必要がある.そこで本研究では,都市近郊における竹林の分布変化とその要因,林分構造,および林分動態を明らかにすることを目的とした. 岡山市北部の都市近郊域を対象とし,航空写真によって分布の変化を調べ,聞き取り調査を行い変化の要因を考察した.調査域全体で竹林の面積は著しく増加しつつあることがわかった.その傾向は,平地の竹林より傾斜地の竹林の方が著しかった.平地では竹林周囲の土地利用が田畑,宅地,道路など人為圧の高い土地利用であるために,拡大の程度が小さかったと考えられた.傾斜地では,竹林周囲の土地利用が樹林であることが多く,竹林周囲の薪炭林,果樹園などが放棄され,竹林に対する人為圧が低下したことによって顕著に拡大したものと考えられた.そこで,平地で田畑,河川に囲まれ分布に変化がなかった竹林と,傾斜地で樹林に隣接し分布に変化があった竹林において,群落構造の経年変化を調査し,それぞれの群落の維持機構と拡大の過程を検討した.平地の竹林では,調査期間中,稈密度,胸高直径,現存量が調査群落全体で増加した.林内では稈のターンオーバーが少なく現存量がほぼ一定であったが,林縁では稈のターンオーバーが著しく現存量が増加した.竹林に潜在的に拡大傾向があることによって,このように竹林と林縁で構造と動態に相違が見られたものと考えられた.傾斜地の竹林では,調査期間中,稈密度および現存量が調査群落全体で増加したが,胸高直径には変化がみられなかった.竹林の林内では現存量,稈密度はほぼ一定であったが,樹林隣接部では枯死稈が少なく稈の密度と現存量の増加が顕著で,樹林へ竹林が拡大していた.稈は隣接する樹林に4年間で3.5m侵入した.
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