研究概要 |
常緑性黄色花ツツジの作出を目的として,これまで,黄色花をもつキレンゲツツジとさまざまな常緑性ツツジ類との交配が試みられてきたが,得られた雑種はほとんどがアルビノであり開花までに至っていない. 昨年度はさまざまな常緑性野性ツツジ類(ヤマツツジ,ミヤマキリシマ,フジツツジ,マルバサツキ,キシツツジ)ならびにそれらのF1とキレンゲツツジとの単交配および三系交配を行い,着果率,さく果内の胚珠数,胚珠稔性,緑色固体の発生頻度および得られた実生の雑種性を調べた.その結果、単交配では実生をほとんど得ることができなかったが,常緑性ツツジ類のF1を種子親にすると若干の雑種実生を獲得できた.しかし,得られた雑種実生のほぼ9割はアルビノとなった. そこで,9年度はPCR-RFLP法を用いて,8年度の交配で得られた実生の葉色と葉緑体DNAの遺伝性との関連性を調査しアルビノの発現要因について検討した. その結果,常緑性ツツジのF1×キレンゲツツジの交配で得られたアルビノ個体の葉緑体DNAはすべて種子親由来(常緑性ツツジのF1=母性遺伝)であったのに対し,緑色の健全な個体の葉緑体DNAはすべて花粉親由来(キレンゲツツジ=父性遺伝)であった.一般に,ツツジ類の葉緑体DNAはほとんどの場合母性遺伝であり,父性遺伝はごく低頻度にしか起こらないとされている. 今回の一連の研究の結果,ツツジ類の種間交雑におけるアルビノの発現と葉緑体DNAの遺伝性とは密接に関連していることが示唆されるとともに,アルビノの発現は葉緑体DNAと核DNAとの不親和性に起因する可能性が示唆された.
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