異常茎発生の初期兆候は、花房の大きさが約1〜2cmのころに花房が着生している節の直下の茎中央に現れ、縦方向に5mm〜10mmほどの長さで内側にへこんだ条溝が生じる。条溝の発生した部分では、皮層細胞が小さいこと、小さな木質部が連続して条溝内側に連なっていること、木質部の道管径が小さいこと、木質部のリグニン化が強いことなどが認められた。さらに、症状が進行し窓開きの兆候が現れた茎では、深い条溝を境にして2分された双方の茎の伸長速度の差が現れ、一方の茎が他方の茎を引き吊るような格好で伸長し、窓開き症状が進行した。窓開き症状は花房と最終葉(当該花房が分化する直前の葉)の間隔がきわめて短く、ほぼ向かい合うように着生した場合に生じやすいことがわかった。ただし、条溝の発生は花房間の葉においても認められた。しかし、いずれの場合も葉あるいは花房の着生基部を中心にして条溝が現れ、節間部分だけに深い条溝が発生する事はなかった。条溝あるいは窓開き症状が進行する株では、全体に茎径が太い、葉柄及び仮軸径も太い、葉柄がねじれるなどの傾向が認められた。葉柄のねじれも、茎の伸長速度のギャップによる窓開き症状も類似した現象と思われる。以上の結果から、組織形態学的には、条溝および窓開き症状の発生とその発達は、葉柄及び花柄の発達にともなうこれら器官の着生部における茎軸の肥大及び伸長生長のアンバランスによって引き起こされるものと考えられる。なお、本年の研究においては、仮軸生長と異常茎発生との関連を組織形態学的な観察結果から明らかにする事はできなかった。 今後は、茎軸における維管束走行(太さ、数)と条溝発生部位との関連、並びに栄養過多条件下での茎軸形成と維管束発達との関連を調査する予定である。
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