研究概要 |
本研究は、河川の高水敷を対象に,主に陸棲昆虫類の生息状況を把握するとともに高水敷の環境状態との関連性について言及を試み,高水敷の整備に際しての昆虫類の生息からみた基礎的データの把握,さらには,昆虫類の生息に適した河川環境の創出手法,特に,高水敷を中心とした自然の保全手法等について検討することを主な目的としている。そこで,調査・研究対象地としては,大都市近郊にあって,様々な利用が図られていることにより,流域によって高水敷の環境条件が異なり,昆虫類の生息との関係が把握しやすいものと考えられる多摩川を選定した。 調査は平成8年から9年にかけ、主に環境実態調査、ベイト・トラップ法およびライト・トラップ法による昆虫類の生息調査を行い、ベイト・トラップ調査からは、2目9科33種2,058個体、ライト・トラップ調査からは、5目39科165種944個体の昆虫類が確認された。平成10年には、これらのデータ等をもとに解析した。 環境状態調査およびベイト・トラップ調査結果からは、トラップ設置地点別の科数、種数、捕獲数の相関やクラスター分析等による種組成等から、多種・多数の地表徘徊性昆虫類の生息に適した植生等の環境状態や特定の種の生息に適した環境状態に関する傾向等が認められた。つぎに、環境状態調査およびライト・トラップ調査結果からは、植生等自然的な環境状態が存在している上流部に設置したトラップの方が中・下流部のトラップと比較して、多種・多数の昆虫類の生息が認められた。また、上・中・下流部における植生、維持管理、利用等を中心に、昆虫類の生息からみた環境状態の創造方策が示唆された。 以上をもとに、野生の生き物、とりわけ昆虫類の生息を考慮した高水敷を中心とする河川環境の保全手法、自然の保全手法、今後の課題等について検討した。
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