研究概要 |
イネ・キチナーゼ遺伝子のcDNA(RCC2)を導入したキュウリ(品種:霜不知)当代および後代の菌類病に対する抵抗性の増強を検討した.灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の分生胞子懸濁寒天片(径2mm)を組換え株(CR)および非組換え株の葉面に接種した後に病班形成を調べた結果,約60%の当代株で抵抗性の増強がみられた.次に,強抵抗性を示したCR32株の自殖後代役80株について同様の抵抗性検定を行ったところ,約70%の株で抵抗性の増強がみられ,そのうちの約20%の株は親株と同等の強い抵抗性を示した.これらの抵抗性株では,PCRによりRCC2が確認され,イネ・キチナーゼ抗体を用いたELISA検定からイネ・キチナーゼ発現量と抵抗性の増強に正の相関が認められた.ρ-ニトロフェニルでラベルしたN-アセチルグルコサミンのオリゴマーを用いてキチナーゼ活性を調べた結果,抵抗性株は非組換え株に比べて高い活性を示した.また,これらの株における本菌胞子の感染行動を調べた結果,侵入以前の感染行動に阻害はみられず,侵入後の細胞内菌糸の生育に顕著な抑制が認められた.以上の結果からCR32組換え株の抵抗性増強は主としてキチナーゼ活性増大によることが示唆された.
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