デイゴ種子キモトリプシンインヒビターECIは、1分子で2分子のキモトリプシンを阻害することが推定されているが、その詳細な阻害機構は不明である。本申請研究では、ECIの第一の反応部位Leu^<64>を他の19種のアミノ酸に置換した変異体と、N末端10アミノ酸残基を削除した欠損体、さらにECIに存在する4つのループ構造の各2残基を欠損した4種の変異体を作製し、それらのキモトリプシン阻害活性を調べた。 Leu^<64>の変異体とループ構造の変異体は、それぞれ変異を導入したプライマーを用いた部位特異的置換法により、またN末端10アミノ酸残基の削除は、PCR法により作製した。変異体遺伝子の大腸菌内での発現は、発現ベクターとしてpET-22b、宿主菌としてBL21(DE3)株を用いた。キモトリプシンに対する阻害活性は、カゼイン法を用いて測定した。その結果、64位をアルギニン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、およびメチオニンに置換した変異体は、野生型とほぼ同程度の阻害活性を保持していたが、その他のアミノ酸に置換した変異体の阻害活性は野生型の約1/5に低下していた。N末端10アミノ酸残基を削除した変異体は、ほとんど阻害活性を示さなかったが、4種のループ構造の変異体は完全な阻害活性を保持していた。本研究より、ECIにおいて、第一の反応ループの周辺構造がキモトリプシンとの相互作用に重要であることが示唆された。今後、第一の反応ループに位置する各アミノ酸の阻害活性への寄与をさらに詳細に調べていきたい。
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