研究概要 |
植物体中に複数存在するキチナーゼ分子の活性発現機構を明らかにする目的で種々のキチナーゼの分子構造を決定し,その構造をもとに反応機構,活性中心の構造を検索することを目的としてオオムギ,ダイズ及びヤマノイモのキチナーゼについて構造,酵素学的性質及び反応機構について調べた.オオムギでは2条オオムギからクラスIIキチナーゼ,6条オオムギのハダカムギからクラスIキチナーゼを精製した.ダイズからはクラスIIIキチナーゼを精製した.これらのキチナーゼについて構造及び諸性質について調べた.その結果,2条オオムギキチナーゼの全構造,6条オオムギ及びダイズキチナーゼの部分構造を決定し,2条オオムギ(クラスIIキチナーゼ)の諸性質を明らかにした.さらにすでに構造解析を行った,ヤマノイモクラスIIIキチナーゼ及びクラスIVキチナーゼについて酵素学的性質を調べた.その結果,クラスIIIキチナーゼとクラスIVキチナーゼは至適pHや至適温度などに差が見られ,酵素学的に異なる性質を有することが明らかとなった.また,クラスIIIキチナーゼは6個の基質結合部位を有し,非還元末端から4個目と5個目の間に触媒部位があることを明らかにした.また,クラスIVキチナーゼは4個の基質結合部位を有し,中央に触媒部位があることを明らかにした.これらの結果から植物キチナーゼは少なくとも構造が異なるクラスIIIキチナーゼとクラスIVキチナーゼはその反応機構が異なると推定され,生理的役割も異なると思われた.
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