研究概要 |
近年の繭及び生糸の生産並びに需給を巡る状況の変化により,長い間,我が国の蚕糸業の根幹となっていた製糸業法及び蚕糸業法は平成10年4月1日をもって廃止された.そのため,蚕糸業法の第16条に規定されている生糸検査は廃止され,それ以降の検査は,日本農林規格(JAS)による検査へ移行した.これによって,生糸はこれまでの衣料分野中心から,エコマテリアル等の様々な分野での応用へと利用範囲が拡大していくと思われる.また,そういう努力が環境にやさしい材料として,絹産業の発展につながると思われる. 一方,製糸工場及び機屋等調査報告書(神検タイムスNo.242)によれば,国産糸の流通が減少し,中国,ブラジル等の外国糸が多くなってきた.そのため,生産国間の品質のばらつきが問題となりつつあり,信用ある第三者機関による検査の必要性を認めている.しかし,現在の状況下では,旧来のような熟練検査員による生糸検査を続けることは,専門技術者の不足,効率性等の問題から相当困難であると思われる. そこで,著者らは,このような生糸検査の自動化を目的として研究に取り組んだ.そして,生糸検査の中でも,主として節検査の自動化を目指して,検査員の検査時の視覚情報処理過程を解析した.その結果に基づいて,ファジー理論を応用したコンピュータモデルを構築し,検査員の検査結果に近い処理が可能なシステムを開発した.
|