研究概要 |
酸性土壌における植物の生育障害は、可溶性アルミニウムの過剰(アルミニウム・ストレス)によるといわれ重要な今日的課題であるが、その研究は殆ど植物で行われ微生物を対象とした研究は極めて少ない。本研究では、酸性土壌、酸性鉱山水や酸性温泉水などの酸性環境から分離した多数の「好酸性従属栄養細菌」の中からアルミニウム耐性細菌を選抜して、アルミニウムの生育への影響や耐性機構について検討した。 種々の酸性環境から分離した好酸性従属栄養細菌65菌株及び基準菌株5菌株について、アルミニウム10-200mM(pH3.5)培地で培養した結果、全菌株で高いアルミニウム耐性が認められた。ところが、これらの菌株は、むしろアルミニウム濃度200mMの存在でその生育が顕著に促進されることから「好アルミニウム細菌」であることを明らかにした。これらの菌株は通常の培地では生育しない低pH条件(pH2.5以下)でも、高濃度のアルミニウムの存在により生育が著しく改善される。アルミニウムは、栄養源や生育必須因子になることはなく、また2価鉄イオンのようなエネルギー源として働くことはないが、その生育促進効果は顕著である。アルミニウムの菌体への吸収を検討した結果、乾燥菌体1g当たり1,000-2,000μg(菌体重の0.1-0.2%)のアルミニウム吸収が認められた。この吸収量は、アルミニウム集積性植物(紫陽花や茶樹)と比較しても異常に高い値である。さらに、アルミニウム耐性あるいは生育促進に関わる要因として、キレート能を有する有機酸および細胞内タンパク質に注目し、アルミニウム添加によるそれら両物質の消長を解析した。しかし、生育促進に直接結びつく有機酸およびタンパク質成分の存在については、明確な結論は得られなかった。
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