研究概要 |
わが国の主要畑土壌であり,作物へのリン酸供給力が低い黒ボク土におけるリン酸可給性を的確に評価するために,黒ボク土のリン酸吸着特性および蓄積リン酸の可給性に対するコロイド組成(アロフェン質-アロフェン主体,非アロフェン質:Al-腐植複合体主体)および土壌pHの影響を明らかにした。 1.コロイド組成とリン酸吸着活性との関係 リン酸吸着には活性Al(酸性シュウ酸塩可溶Al)が最も強く関与し,単位活性Al当たりのリン酸吸量は,非アロフェン質多腐植質はアロフェン質非腐植質の約2.5倍と高い値を示した。 2.コロイド組成の異なる黒ボク土における蓄積リン酸の可給性 EDTA-NaF抽出Pは可溶性蓄積Pを表し,同一蓄積P,可給態P(Truog,Bray法)レベルで比較すると,植物の吸収P量はアロフェン質>非アロフェン質であり,作物生育を向上させる可給態リン酸量は,非アロフェン質黒ボク土でより高い値が必要であることが明らかとなった。同一蓄積Pレベルでの可給態P含量は,Truog-P,陰イオン交換樹脂抽出(Resin(HCO_3))-Pではアロフェン質>非アロフェン質であり,Bray-PおよびResin(Cl-型)-Pは非アロフェン質>アロフェン質であり,抽出法によって傾向が異なっていた。したがって,可給態リン酸量によって作物に必要なリン酸レベルを評価するためには,コロイド組成を考慮することが不可欠であることが明かとなった。 3.土壌pHとリン酸可給性 土壌pHが4.5〜7の範囲では,可給態態リン酸含量はpHによって変化しない。しかし,オオムギのリン酸吸収量は非アロフェン質ではpH5.3以下で,アロフェン質ではpH4.6以下で減少し,これは根量の減少と一致した。低pHでのリン酸吸収量の低下はAl過剰障害による根量の減少によることが明かとなった。
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