研究概要 |
植物油脂合成に関わるアシルトランスフェラーゼ系酵素が,油脂の脂肪酸組成と集積速度の調節に果たしている役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 ある系統のカリフラワーのリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPA-AT)が,他の油糧植物のLPA-ATとは異なったアシル-CoA分子種に対する基質特異性を有していることを見いだし,そのLPA-AT遺伝子の構造と脂肪酸組成の調節に果たす役割を明らかにした。すなわち,このLPA-ATは390アミノ酸から成る43.6KDのタンパク質であり,そのアミノ酸配列には3ヶ所の疎水領域が存在している。アミノ酸レベルでの相同性は,67%(トウモロコシ),20%(ヤシ),19%(大腸菌,ヒト)であった。このLPA-ATに対応するcDNAを発現させた大腸菌の膜画分は,オレイン酸よりもステアリン酸を効率よく基質として利用した。このことから,カリフラワーLPA-ATがグリセロール骨格のsn-2に飽和脂肪酸を優先的に取り込むという特異な性質を持ったLPA-ATであることが証明された。また,登熟期種子におけるこの酵素活性の発現はトリグリセリドの集積と密接に連動していた。そしてLPA-AT mRNAが登熟初期に集積していることから,トリグリセリド合成系がすでに種子登熟の早い段階から備わっていることが明らかになった。 さらに,登熟期イネ種子についても研究を進め,トリグリセリドが集積するアリューロン層や胚だけでなく,デンプン性胚乳組織でもLPA-AT mRNAが活発に合成されていることを見いだし,胚乳組織のデンプン結合リン脂質の合成に,LPA-ATが重要な役割を果たしていることを示唆した。
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