研究概要 |
酵母Cdkファミリーに属するCdc28キナーゼとPho85キナーゼによる細胞周期制御の役割分担を調べるために、Pho85キナーゼによるS期のCdk阻害因子Sic1のリン酸化機構と、Pho85キナーゼのチェックポイントへの関与について実験を行った。 1.Pho85キナーゼによるSic1のリン酸化。Pho85キナーゼがSic1をリン酸化するときのサイクリンパートナーを同定するために、Clb2,Clb5,Pcl1,Pcl2,Pho80をそれぞれ大腸菌細胞中で発現させ、それぞれのサイクリンを含む細胞抽出液を調製した。これと大腸菌から精製したPho85キナーゼを組み合わせ、Sic1のリン酸化能を調べたところ、Pho85-Pcl1複合体のみがSic1をリン酸化できることを見いだした。Cdc28-Cln2複合体も試験管内でSic1をリン酸化できることが知られているので、Cdc28とPho85によるSic1リン酸化の役割分担を調べた。Sic1分子中の3カ所のCdkによるリン酸化可能部位の変異体を作成し、野生株及びpho85欠失株中で過剰発現させたところどちらの株もG2期で生育が停止した。そこでリン酸化可能部位を一カ所ずつ残した変異体を過剰発現させたところ、pho85欠失株の生育は阻害するが野生株のそれは阻害しないものがあった。このことはCdc28とPho85がSic1の異なる部位をリン酸化している可能性を示している。 2.ヒドロキシウレア、ベノミル、紫外線照射などのpho85欠失株に対する影響を調べたところ、pho85欠失株はヒドロキシウレアのみに超感受性であることがわかった。しかしヒドロキシウレア処理後の生存率は64%であり、pho85変異はチェックポイントには影響しないことがわかった。
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