研究概要 |
ピログルタミン酸(pGlu)とはGluのγカルボキシル基とαアミノ基が分子内脱水縮合した環状アミノ酸であり、Gluとは異なり無味である。味噌や醤油の醸造熟成中において、タンパク原料がら遊離した呈味性のGluは非酵素的な環化反応を受けて、多量のpGluが蓄積する。申請者らはこれまで知られていない開環酵素(pGlu→Glu)を微生物に探索し、Alkaligenes faecalis N-38A株の分離に成功した。この酵素を主材に研究を進め,以下に示す成果を得た。その酵素反応を化学量論的,速度論的に解析した結果、本酵素は、ATP、MgイオンおよびKイオンを要求しないタイプの酵素であり、5-Oxoprolinase(without ATP-hydrolyzing)と命名すべき新規酵素である事を明らかにした。Alkaligenes faecalis N-38Aの酵素遺伝子のクローニングと塩基配列を試み,目的酵素遺伝子1.5kbを含む約5kbをpUC19のBamH1サイトに挿入したプラスミドB8をPCRで増幅した後、EcoRIとHindIIIで消化しpUC18/EcoRI・HindIIIに連結した。つぎにJM-109を形質転換し目的のN-38A/pUC18を得た。N-38A/pUC18の塩基配列の解析を行ったところ、N-38A酵素のN末端配列が存在し、シグナル配列の存在も確認できた。この配列は既知蛋白質との間にはホモロジーは認められなかった。N-38A/pUC109による大腸菌JM-109で発現を検討したところ,IPTGの誘導で酵素タンパクの産生がSDS-PAGEで検出されるとともに,酵素活性も検出された。さらに大腸菌TG-1ではさらに発現量の増大が観察されたが、検討した条件では封入体のままで蓄積した。現在のところ,酵素活性を持ったタンパクへの可溶化には成功していない。
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